今でこそ主流になってきましたが、まだあまり知られていない「インフューズドコーヒー」
一体どんなものなのでしょうか。
実は少し物議を醸したこともある、コーヒー界のお尋ね者という一面もあります。
その点については記事の後半で…
定義
「インフューズドコーヒー」とは、コーヒー豆の発酵段階で、様々なフレーバーを一緒に漬け込む(infused)ことで独自のフレーバーを持たせたコーヒーです。
種類
「インフューズドコーヒー」には様々な種類があります。
フルーツインフューズド
ストロベリー・オレンジ・パッションフルーツ・メロン・ピーチなど
ジュースやシロップにしたものを使用することもあります。
スパイス・ハーブインフューズド
シナモン・バニラ・カルダモン・クローブなど
アルコールインフューズド
ウイスキー・ワイン・日本酒など
特徴
「インフューズドコーヒー」は上記で記載したような、フルーツやハーブの味を移したコーヒーです。もちろん味はその一緒に漬け込んだ素材のフレーバーになります。私が初めて飲んだインフューズドコーヒーはピーチと一緒に漬け込んだコーヒーで、「ピーチシロップが入っているのか!?」と思うくらい、しっかりピーチの味がしました。
何が物議を醸したのか…
コーヒー豆は豆自体にフルーツやハーブ、スパイスなどのフレーバーを持っています。良いフレーバーを持った高品質なコーヒー豆を育てるのがコーヒーファーマー(農家)であり、そのフレーバーをどう引き出すかを日々研究しているのが、ロースター(焙煎士)でありバリスタです。
しかし、インフューズドコーヒーの味はコーヒー豆本来のフレーバーではなく、人為的に追加されたフレーバーを強く感じます。追加されたフレーバーは、コーヒーがもつ独自のフレーバーを凌駕してしまうのです。
もちろんインフューズドコーヒーを精製する上でも数多もの研究が重ねられ、よりおいしいコーヒーになるよう努力されています。インフューズドコーヒーも立派なコーヒーです。
では、何が物議を醸したのか。
問題は、一言で表すと「信憑性」です。
つまり、そのコーヒーがコーヒー豆由来のフレーバーなのか、外部から追加されたフレーバーなのか、確かめようがないということです。
実際にインフューズドコーヒーであることが明記されないまま市場に出回ったコーヒーがあったり、バリスタの大会にてインフューズドコーヒーが持ち込まれたケースもあります。(インフューズドコーヒーであることを伏せたまま)
そのように情報が不透明な状態だと、豆本来の味で勝負しているファーマーや、ロースター、バリスタは報われず、コーヒーの味の良し悪しを決める大会も意味をなさなくなってしまいます。
私たち消費者も、何が含まれているかわからない、信憑性に欠ける飲み物を飲もうとは思いません。
コーヒー全体に対して、マイナスな印象を持ってしまうかもしれません。
個人的見解
インフューズドコーヒーを否定することはコーヒーの世界を狭めてしまう、非常にもったいない選択だと個人的には思います。
しかし「なんかずるい」「こんなのコーヒーじゃなくない?」と思う気持ちもわかります。
唐揚げは、下味をつけるために鶏肉を醤油や酒に漬けておきます。そうすると味が染みておいしいです。
唐揚げはおいしいですが、鶏肉のおいしさを競う大会に唐揚げはエントリーできません。鶏肉本来の味の良し悪しを決める大会では、おそらく審査員は火を入れただけのシンプルな鶏肉を食べて評価することになると思います。
しかし、唐揚げの大会があってもいいんです。唐揚げの大会では鶏肉の良し悪しはもちろん、下味をつけるなどの調理過程も審査基準となります。
わかりやすいようでわかりにくいですが、そういうことです!
今まで焼いた鶏肉しかなかった世界に、唐揚げが生まれたようなものです。
①唐揚げは味つけされているものだということ、②鶏肉と唐揚げのNo. 1は別々の大会で決めること、この2点の情報は正しく共有されている必要があります。コーヒーも同じくです。
新しいものはすぐには受け入れられません。
社会の流れに合わせて徐々に私たちの生活に溶け込んでいきます。
インフューズドコーヒーを、今までのコーヒーと同じものととらえるか、別物ととらえるかはみなさん次第かと思います。
私は「もっと気軽にコーヒーを」楽しんでもらいたいので、この記事を読んで、「こんなコーヒーがあるんだ」「試してみようかな」と思っていただけると嬉しいです。
最期に、インフューズドコーヒーの登場によって、コーヒー界全体の「正しい情報を届ける意識」が改めて重要視されたように思います。私もバリスタとしてお客様にコーヒーをお出しする際は、必ず「正しい情報を届ける意識」を持ち、お客様が不安や誤解を抱かぬよう努めます。